従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
9月度の衛生委員会の資料になります。
9月度のテーマは「企業に求められる防災対策と災害時の対策」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2024年9月度
衛生委員会資料
産業医 北村 香奈
8月には南海トラフ地震臨時情報が出され、緊張感のある1週間を過ごしましたね。そして今度は勢力の強い台風が長い時間をかけて日本列島を横断。日本は自然災害の緊張感が常にある国と言えます。ですから、いつ災害が起きても慌てず、正しく早く行動できるよう、防災対策といざ起きた時のシュミレーションをしておきましょう。
まず、企業における防災対策の現状を見てみましょう。
財団法人 労務行政研究所は2012年1月に「3.11大震災以降の職場と個人の実情に関するアンケート」を実施しました。これによれば、勤務先の企業・団体で行われている震災対策の現状を、6割が「不十分」と評価しています。
不十分と感じる理由は「(対策を)実施していない」「分からない・知らされていない」。これらの回答が最も多かったのは、『災害で出社困難な場合の対応ルールの周知(61.5%)』、次いで『オフィス家具・備品の固定など防震・転倒対策を実施(59.3%)』、『災害時の行動マニュアルの整備(55.7%)』、『飲料水・非常食などの備蓄(53.2%)』などが挙げられました。
そこで、不十分なところの解決を図っていきたいと思います。
まずは職場環境について、以下の取り組みを行いましょう。
パソコンの転倒防止と データのバックアップ
オフィスの防災で、比較的簡単に、すぐ取り組めるもののひとつが「パソコンの転倒防止」です。転倒防止ベルトで机に固定したり、粘着マットを使うなど、早速対策を講じておきましょう。
さらに、パソコンの固定とあわせて、データやシステムのバックアップも定期的かつ頻繁に行うようにしましょう。重要なデータ等は、遠隔地でのバックアップも有効な手段です。
避難経路を確保
出口や廊下、階段等の避難経路に物が置かれていると、避難の障害になります。例えば、2001年に東京・新宿歌舞伎町で発生した雑居ビル火災は、避難路となるはずの階段が各フロアの物置代わりに使われ、荷物でふさがれていたため、44人の死亡者を出す惨事となりました。
日ごろからオフィスの整理整頓に努めることも大事な防災対策です。
オフィス家具の固定
建物に被害がない場合でも、オフィス家具類の転倒・落下・移動が発生します。まず身の回りの什器・備品から、耐震確認をはじめてみましょう。
階層別の発生率は、高層階で高くなる傾向が確認されています(図1)。これは、長周期地震動が一因と考えられます。長周期地震動は、建物や地域により異なりますが、高い建物の高層階が被害を受けやすい特徴があります。
オフィスにある背の高い大型キャビネットは、壁等に確実に固定し、コピー機等の事務機器や店舗用の機械設備も、地震で床を滑ったりしないように対策を講じましょう。その他、ガラス飛散防止や家具扉に止め金を付けるなど、家庭で行っている「安全空間」づくりの対策がオフィスでも活用できるでしょう。
(「やってみよう防災対策」参照)
企業防災の目的はふたつあります。ひとつは災害被害を最小化する「防災」。もうひとつは企業活動の維持と早期回復を目指す「事業継続(BC)」です。どちらの目的も達成するよう、備品・備蓄を揃える必要があります。
備品・備蓄の目安は、「発災後3日間」の間、従業員や来社中の取引先、顧客が困らないくらいの量が基本です。また、震災の影響は3日間のみであるとは限りません。可能であれば3日分以上の備蓄についても考え、用意しておくことが理想的です。
①備蓄・備品について
- 生命の要「水と食糧」
・水は1人あたり1日2〜3L
・主食は1人あたり1日3食
主食は「アルファ化米」「クラッカー」「乾パン」「カップ麺」などです。賞味期限に留意しつつ、必要な非常食を揃えましょう。最近はおしゃれで美味しい非常食が多くのメーカーから販売されています。ちなみに、2016年度の「日本非常食対象」美味しい部門でグランプリを飾ったのは杉田エース株式会社。非常食のなかで、ひとつでも好きな味があると、心がほっと和らぎますよ。他にも美味しい非常食があるので、ぜひこちらの記事を参考に探してみてください。
参考記事:
■2016年で一番美味しい非常食が決定!第一回「日本災害食大賞」レポート【防災EXPO2016】
- 緊急用の薬
・胃腸薬 ・解熱剤 ・持病の処方薬
大地震で水が止まった時に助かるのが「胃腸薬」。被災すると、精神的にも肉体的にも疲労がたまり、さらに水が使えないことから十分な衛生な環境が確保できず、お腹を壊してしまう人が増えます。そんな時に、胃腸薬を用意しておけば安心です。また喘息や糖尿病などの持病のある従業員に対しては、普段から持ち歩くように声をかけるなど、個々へのアナウンスすることも大切です。
- その他必要性の高い物資
・毛布やそれに類する保温シート ・簡易トイレ(非常用トイレ) ・衛生用品(トイレットペーパ等) ・敷物(ビニールシート等) ・携帯ラジオ ・懐中電灯 ・乾電池
・救急セット(包帯・ガーゼ・絆創膏・消毒液など) ・マスク ・歯ブラシ ・生理用ナプキン
・非常用発電機 ・工具類 ・調理器具(携帯用ガスコンロ、鍋等) ・副食(缶詰等)
・ヘルメット ・ヘッドライト ・革の手袋 ・自転車 ・暖房用品、暖房器具 ・地図 ・新聞紙
・ポリ袋 ・大判ハンカチ ・レインコート
備蓄以外での重要事項
備蓄品の保管場所は社内全域に
備蓄品の保管場所については、全て倉庫等にまとめて置かずに社内全域に設置しておき、従業員に周知しておきましょう。さらに、前もって従業員に防災用品を配布しておくことで、個々の危機感が高まり、実際に災害発生時の配布作業が軽減されるので有効です。
備蓄品の管理には消費期限を記入したチェックリストを使用
食料等の備蓄品には消費期限がありますので、定期的にチェックする必要があります。その場合、それぞれの消費期限を記入したチェックリストを作成しておくことで、いちいち備蓄品を全て確認しに行かずに済むのでオススメです。
②事業継続について
東日本大震災以後、災害や事故など、事業拠点であるメインオフィスが被災した場合の代替オフィスとして「バックアップオフィス」を構えることを検討する企業が増えています。
セキュリティの観点から、企業の保有するさまざまな情報をデータセンターに預けることは珍しくありません。ですが、事業拠点が被災してしまうと、そもそもパソコンがなく従業員が働ける状況にない場合があります。そんな時、机や電話、複合機など、業務に必要な設備がそろうバックアップオフィスがあると安心ではないでしょうか。
③災害時の従業員の安全確保について
業員の一斉帰宅の抑制と安全な場所の確保
実際に、災害が発生して公共交通機関が麻痺した場合、帰宅困難となった従業員を社内の安全な場所へ避難させる必要があります。
このために、予め職場が安全な場所であるかどうかの確認をしておく必要があります。以下の2点を中心に、安全なスペースの確保に努めましょう。
1.オフィスの家具類の転倒・落下防止対策
2.事務所内の窓ガラス飛散防止対策
従業員との連絡手段の確保
災害時においては、固定電話や携帯電話は大幅に利用制限がかけられてしまいます。さらに、緊急通報等の通信手段を確保するためにも、個人間の通話は抑制される可能性があります。
したがって、事業者は予め従業員との連絡手段を確保しておくと同時に、従業員に対しても家族との連絡手段を複数確保するよう周知・徹底する必要があります。
<各種連絡手段>
・公衆電話 ・安否確認サービス
・各種SNS(LINE、Facebook、Twitter)
・災害用伝言ダイヤル「171」〜平常時にお試しすることができるので一度お試しを!
・災害用伝言板 ・J-anpi ・スマートフォンアプリ(ネットラジオアプリ、地震情報アプリなど)
従業員同士での連絡や家族の安否確認の手段として、こういった「通話以外の手段」を、日頃のうちに広く周知していくことが重要になります。
最後に、自宅で備蓄すべき防災グッズリストも確認しておきましょう。
自宅備蓄用防災グッズ
懐中電灯 |
毛布 |
食品 |
哺乳瓶 |
携帯ラジオ |
電池 |
インスタントラーメン |
現金 |
ヘルメット |
ライター |
缶切 |
救急箱 |
防災頭巾 |
ロウソク |
ナイフ |
貯金通帳 |
軍手 |
水 |
衣類 |
印鑑 |
|
|
|
|
外出用カバン向け防災グッズ
携帯ラジオ |
ライト |
乾電池 |
携帯電話用充電器 |
歯ブラシ |
携帯トイレ |
ホイッスル |
小銭 |
エマージェンシー・ブランケット |
マップ |
水筒 |
これら防災、災害時対策を文面で確認するだけでは実際に対応できるか心配ですよね。そこで、避難訓練を1年に1度は実施しましょう。避難訓練の実施は消防法第8条および第36条により義務付けられています。何より災害時に正しく対応し社員の方々の安全を確保できるために訓練を真剣に行うことをお願いしたいです。