従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
2月度の衛生委員会の資料になります。
2月度のテーマは「震災について」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2024年2月度
衛生委員会資料
産業医 北村 香奈
今年は元日に大きな地震が発生し、驚きと悲しみに包まれました。犠牲となられた方、被災され今まだ大変な生活をされている方々もおられ、深く哀悼の意を表するとともに、少しでも早く復興が進みますことをお祈り申し上げます。
そんな中、地震大国日本において地震を止めることはできませんが少しでも被害を少なくするための予防策は日々の心がけでできるはずです。昨年9月にも防災対策についてはお伝えいしてはいるのですが、改めて職場における地震対策についてお伝えしておきたいと思います。
▶震災においてオフィスで想定されるリスク
震災発生時に、オフィスで想定されるリスクとしては以下のようなものがあります。
天井の破損:最近は配線の組み換えができる構造の天井が多く見られますが、そうした天井が脱落するケースが発生しています。震災後に「システム天井が落ちた」といった声も聞かれています。
エレベーター停止:業務稼働時に地震が発生した場合には、エレベーターの緊急停止により多くの人が閉じ込められる危険性があります。
オフィス家具、大型家具などの転倒:オフィスには一般家庭以上に大型・大重量のオフィス家具や機器があり、下敷きになると大ケガをする恐れがあります。
棚からの書籍・備品の落下:書籍や備品は軽いものであっても、落下・散乱により避難の妨げとなります。
サーバーの停止・損傷:業務停止を余儀なくされ、復旧が困難になることも予測されます。
そこで、安全なオフィスを構築していくためのポイントをお伝えします。
防災担当者の選任
地震対策を体系的に進めていくためには、「安全配慮義務」「帰宅困難者対策条例」「BCP」などへの理解が深い防災担当者の選任が必要です。各部署内やパートごとにもそれぞれ担当者を選任し、企業内の安全ネットワークを構築していきます。防災担当者は安全確認ルートの策定や社内への周知徹底、備蓄品の管理などを実施し、地震やその他の災害に備えます。
避難経路、避難所の確認
出入口や廊下、階段などの避難経路の障害物を定期的に確認し、避難経路を確保しておきます。あわせてオフィス内の整理整頓を行い、日ごろから有事の際、避難の邪魔にならないように心がけておきます。社内で安全性の高いスペースを確認しておき、一時的な避難場所を確保しておくと、揺れが収まるまで待機することができます。
行政が発行している会社周辺のハザードマップを確認しましょう。自社の立地から、どんな災害リスクがあるのかを把握しておくことが大切です。ハザードマップで災害時のリスクを確認したら、次にオフィス内の避難経路を確認しましょう。通路や出口、階段をふさぐようなものを置いていると、スムーズに避難できない恐れがあります。衛生管理者や防火担当者などの担当者を決めて定期的に点検を行いましょう。
帰宅困難者対策を忘れずに
鉄道などの公共交通機関の復旧の見通しがない中、多くの人が帰宅を開始すれば、火災や建物倒壊、余震などの二次被害に遭う可能性があり、大変危険です。それだけでなく、駅周辺や道路が混雑することで、災害時に優先して実施しなければならない救助・救援活動などに支障が生じる可能性もあります。
災害発生時にむやみに移動せず、安全な場所に留まるよう従業員に周知する方法を決定しておきましょう。
オフィス家具の耐震対策 オフィスレイアウト
オフィス家具・備品の固定は非常に重要です。機械設備の固定、家具や扉への留め具設置など、見落としがちな個所もしっかりと確認しておきます。また、窓ガラスに飛散防止フィルムを貼付するといった対策も必要です。
オフィスのレイアウトを設計する際には、防災を意識した配置をする必要があります。ワークスペースであるデスク周辺からは背の高い家具を排除し、避難経路が確保できるよう家具を配置しましょう。転倒の恐れがある家具を間仕切として使用しない、家具の上に物品を積み上げないなどのルールも徹底します。
近年発生している地震では、負傷原因のうち家具類の転倒・転落による負傷が3割〜5割を占めています。まずは身の回りの安全を確保するために、家具や備品の固定、耐震対策を行うことが重要です。
オフィスを見渡して倒れてきたら危ない物や落ちてきそうなものがないか、チェックしてみましょう。そのうえで、棚の転倒防止のために突っ張り棒や安定板など、必要な耐震グッズを検討します。
データのバックアップ
現代企業ではデータが大きな資産価値を持ちます。拠点分散やクラウドストレージの活用などで、データの消失や破損といった事態に備えるようにしていきます。
BCPを策定しましょう
BCPをご存じでしょうか?「Business Continuity Plan」の頭文字を取った言葉で、「事業継続計画」と呼ばれています。自然災害を含む企業の緊急事態において、企業が存続するための対策を記したものです。BCPを策定している企業は18.4%(2023年6月時点※)と低水準ですが、政府が示す「一斉帰宅抑制の基本方針」にも必要な取り組みであると記載されています。
大きく2つのメリットからBCP策定をお勧めします。
一つ目は、早期復旧に向けて速やかに対応できる点です。BCPを策定していれば、緊急事態発生時に行うべき重要な業務や物事の優先度を可視化できます。
二つ目は企業評価の向上につながるという点です。災害後に事業が停止してしまうと、取引先に迷惑をかけてしまいます。事業を継続・早期再開できれば、取引先だけでなく投資家からの評価も得られるでしょう。
防災教育、避難訓練の実施
防災担当者だけではなく、全社員が地震への備えをしておくことが重要です。防護、初期消火、救出・救助、応急救護、避難、情報収集など、防災教育と避難訓練を定期的に行っていきます。防災シナリオに基づいた図面上訓練と、その機能を確認するための実地訓練を繰り返してより精度の高い避難行動の実現を目指します。できれば地域との協力体制なども検討しておきましょう。
備蓄品の準備
備蓄品は従業員1名について、非常食3食×3日分・水は1日3リットル×3日分必要です。その他、毛布・マスク・医薬品なども十分準備しておく必要があります。非常食や水については定期的に賞味期限を確認しましょう。
社員に自宅の防災対策を周知しましょう
被災時の事業上の被害内容として「役員・従業員の出勤不可」と回答する企業が最も多かったとされており、従業員の自宅での安全を確保することも企業の事業継続に欠かせないと言えます。大規模な災害に備え、オフィスで働く従業員だけでなく、在宅勤務で働く従業員の安全にも対策を行いましょう。
①自宅環境を整えましょう
会社と同様に、従業員も自宅周辺のハザードマップの確認をして、自宅周辺の災害リスクを把握してもらいましょう。また、家具の転倒防止対策を行い、自宅の安全性を高める必要があります。そのためには、従業員への啓発が課題となるでしょう。従業員の行動を促すために、家具転倒防止グッズの購入費を補助するなどの方法があります。
②備蓄品を備えましょう
大規模地震などでは、当面の間ライフラインが使えない・物資の入手が困難といった恐れがあります。自宅の倒壊を免れた場合、当面自宅に留まって生活することが想定されます。災害時に自宅で生活するうえで必要な食料や生活必需品を日ごろから備えておくことが重要です。
1週間分程の飲料水と食糧、トイレ用品・カセットコンロなどの生活用品を備蓄するよう周知しましょう。疾患がある従業員には、手持ちの処方薬を切らさないように1週間程度のゆとりをもって、定期的に受診をするように周知することも大切です。
③連絡ツールは複数用意しましょう
最近は、安否確認システムや社内用チャットアプリなどの様々な連絡ツールがあり、安否確認のための手段が充実しています。災害時に通信状況が悪化することを想定して、従業員との連絡ツールは複数用意しておきましょう。連絡ツールを準備したら、非常時にきちんと機能させる必要があります。防災訓練や日々の業務を通じて、従業員が連絡ツールを使えるようにしておきましょう。
会社で準備すると良い防災グッズは?
会社で被災することを想定して社員が準備すると良いものは?従業員の防災教育が大切
今回、企業の防災についてご紹介しました。社員の皆様に、というより会社での対応についての話になりましたが、社員の皆様にもご理解いただき、対応が不足していると気づかれた場合は会社に報告していただき、会社がより適切に防災対策に取り組めるようご協力いただければと思います。災害が実際に起きてから後悔しないように、今、危機意識が高まっている中で、できることから少しずつでも対策をしていきましょう。