2023年10月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

10月度の衛生委員会の資料になります。

10月度のテーマは「夏季うつについて」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2023年10月度

衛生委員会資料

産業医 北村 香奈

 

夏が終わり秋になり、過ごしやすくなるとともに日が短くなりだす頃。
なんとなく鬱々として気分が晴れない、落ち込むような感覚になるという方がいます。
これは気のせいなどではなく、季節性感情障害(SAD)という病気からくる症状です。
季節の変わり目、特に日照時間が短くなる秋や冬に多く見られることから「季節性うつ」「冬季うつ」「ウインター・ブルー」など様々な呼ばれ方があります。

つまり、秋になる頃に多かった季節性うつですが、近年、夏場だけうつ病になる「夏季うつ病」と呼ばれる、季節性感情障害が話題になっています。(5月~9月頃に発症しやすいのですが今年はまだ暑いので現状でもあり得ます!!)

夏季うつ
 夏季うつ病で多い症状は、不眠と食欲不振。これは、夏パテと症状がよく似ています。夏バテとの違いは、気分の落ち込みや不安感といった精神的な不調が現われることです。
 夏季うつ病と通年性のうつ病の違いは、夏季うつ病の場合、季節が変わると症状が改善することです。また、うつ病の発症にはストレスが関係していますが、通年性のうつ病ではストレス源が明らかなことが多いのに対して、夏季うつ病では、例えば、喪失体験であるとか人間関係といった原因となるストレスが特定できないといった違いがあります。
 夏季うつ病の引き金となるのは、おもに夏の暑さや環境がもたらすストレスです。暑さによる過度の疲労感や栄養の偏り、睡眠不足、空調の影響による気温差からくる自律神経の働きの乱れ。こうしたことが、夏季うつ病と関係しています。
 夏季うつ病には、女性がなりやすいという特徴もあります。(女性ホルモンの影響)
 夏バテと勘違いして放置しがちですが、毎年夏場になるとうつ状態が現われるという方は、こうした状態を軽視しないで、暑さ対策を含めた生活習慣の改善を行ないましょう。また、生活に支障があるようでしたら、かかりつけ医に相談するようにしてください。

夏季うつの予防対策

  • 日光を浴び過ぎない
    夏の強い日差しは体に負担をかけるため、夏季うつの原因になる可能性があります。屋外で長時間過ごさない、日差しの強い時間帯の外出を避ける、など気をつけましょう。

 

  • 室温を適温に保つ
    室温を2528℃に保てるように、エアコンの設定を調節しましょう。ただし、エアコンの直風は体に負担をかけるので気をつけ、冷えすぎにも十分注意しましょう。

 

  • 質の高い睡眠をとる
    疲弊した体力と自律神経を回復させるためには、やはり睡眠が大切。睡眠時間をしっかり確保し、寝具やパジャマ、寝室などを工夫して質の良い睡眠がとれるように睡眠環境を整えましょう。室温を一定に保つためエアコンをうまく活用しましょう。

 

  • 栄養バランスを整える
    夏は食欲が落ちやすく、栄養バランスも乱れやすいです。意識して栄養バランスを整えるようにしてください。睡眠の質に関わるトリプトファンとビタミンB6を摂取するためには、枝豆や豆腐などの大豆製品、牛乳やチーズなどの乳製品、バナナ、マグロなどがおすすめ。

 

  • 漢方薬

病院に行くのはちょっと抵抗が、という時は、まずはドラッグストアでも手に入る漢方薬を使ってみても良いかもしれません。

 

「清暑益気湯(せいしょえっきとう)」は、主に夏場に用いられます。夏になると痩せて下痢をしやすい方、足がほてり仕事が手に付かない方に使われます。暑さを冷まし、元気を増すことを前提に作られています。

「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」は、夏場だけに限らず、一年を通して用いられます。食後横になったり味覚が鈍麻したりしている方、言葉に張りが出ず全体的に力が出ない方に使われます。

「六君子湯(りっくんしとう)」は、食欲不振や胃もたれ、腹部膨満感といった消化器症状の不振が前面に出ている夏バテの方によく用いられます。

また、ツボを押してみるのもどうでしょうか。 

 

【ツボ押しケア】

・眠れずイライラする時は……深呼吸しながら「神門」のツボをマッサージ

・動悸がする時は……「内関」のツボをマッサージ

万能ツボ・・・百会    頭頂部とその周辺をマッサージ  ストレス解消に効果大

 

**念のため従来の季節性うつについて**

国や地域によって特徴がありますが、多くの国においては日照時間が短くなる10月~11月に発症し、日照時間が長くなる3月頃に回復する、といった具合で、これを毎年繰り返します。
その症状の度合いによっては抗うつ剤の使用などの対応が必要なケースもありますが、基本的には生活習慣の注意によって症状の改善・軽減を図ることができます。

 

<季節性うつ病の症状>


・気分が落ち込むことが多くなる
・疲れやすくなる
・体を動かす、何かを始めるのがおっくうになる
・集中力が落ちる
・楽しめていたことが楽しく感じられなくなる
・以前はできていたことが上手くできなくなる
・食欲がなくなる

などですが、季節性うつの特徴的な症状として
・過食になる(食欲がなくなるという方もいます)・過眠になる  というものがあります。

<季節性うつ(秋バージョン)の対策>

 

対策1: なるべく日光に当たる(光療法) 夏季うつとは逆の対策です!

生活環境や職場を明るくするのもあり。日光浴ついでに運動も。
季節性うつ病の原因の一つとして日照時間の短縮による日光浴時間の減少があります。
日光を浴びると体内ではセロトニンという物質が分泌されるが、セロトニンは「幸せホルモン」などと呼ばれることがあるように人の多幸感に大きく関与しています。
また、セロトニンは睡眠ホルモンである「メラトニン」の原料になります。
メラトニンには睡眠・覚醒や季節感、日々のホルモン分泌などのリズム「概日リズム」にも関与しているため、メラトニンが不足することで様々な変調の原因となります。
これらのホルモンを不足させないように日光に当たる時間を増やす工夫をするほかに、自宅内や職場をなるべく明るくすることでも効果があります。

 

対策2: 栄養バランスの良い食事をする

季節性うつ病にはセロトニンの不足が深く関わっていますが、体の中で作り出すものなので食事にも気を付ける必要があります。
季節性うつ病の症状に「過食」がありますが、この過食は炭水化物(ごはんや麺類など)を特に強く求めるという特徴があります。
ところがセロトニンの材料になるのはアミノ酸の一つ「トリプトファン」。そのトリプトファンを含むアミノ酸を効率よく摂取できる食品は肉や魚などのタンパク質です。
また、アそのミノ酸の効率的な吸収や利用にはビタミンやミネラルも欠かせません。
となると、これらを摂取するためには緑黄色野菜やフルーツなども重要、ということになります。
季節性うつ病になると食欲がなくなってしまったり、炭水化物を求める過食に陥ることで栄養バランスが崩れて悪循環に陥ってしまいます。

対策3: 安定した睡眠スケジュール

季節性うつ病の発生には「体内時計」の乱れも深く関係しているといわれています。
日照時間が短くなる冬は、言ってみれば「時差ぼけ」のような状態に近くなり概日リズムが保てなくなります。つまり、日光浴と同じで体内時計を乱さないようにすることが大事ということになります。

 

季節性うつ病、夏バージョン、秋バージョンについてご理解いただけたでしょうか。とにかく暑さが年々ひどくなっている状況ですので、健康を維持するために今までと違う対策が必要になってきています。確かにいつもと違うな、という自覚がある方もそうでない方も、できることから取り組んでいただければと思います。