従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
7月度の衛生委員会の資料になります。
7月度のテーマは「夏風邪について」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2023年7月度
衛生委員会資料
産業医 北村 香奈
COVID19の感染症法上の分類が5類になり、保育所・幼稚園や学校でのさまざまな活動がCOVID19流行以前の内容に戻り始めています。この環境の変化によって、過去3年目立たなかった感染症が流行しています。そこで、目下流行が立ち上がり始めている夏風邪についてお伝えしたいと思います。
ヘルパンギーナ:2000~21年は全く流行しなかったのに、22年は少しだけ流行が復活しました。そして2023年は第15週頃から増え始め、第21週現在(5月22~28日)、過去10年間の同時期と比較してもかなり多い状況になっています。
手足口病:同じ夏風邪である手足口病は、だいたい奇数年に流行するのですが、21年は全く流行しませんでした。遅れを取り戻すように22年に少しだけ流行しましたが、以前ほどの流行はやはり認められませんでした。23年は最新の定点当たり報告数は3週連続で増加しています。
咽頭結膜熱(プール熱):同じく夏風邪である咽頭結膜熱(プール熱)は、2023年は例年並み――コロナ禍以前のような流行の立ち上がりになっています。過去3年間ずっと下火で推移してきたこともあり、今後の状況をさらに注視していく必要があります。
流行性角結膜炎:流行性角結膜炎はCOVID19の国内流行が始まって急激に数が減り、その後ずっと抑えられたままで推移しています。2020年の緊急事態宣言と休校措置以降、この状態なので、COVID-19対策の影響が大きいのかも知れません。2023年は5類移行のころから過去3年と異なる動きが現れており、注意が必要です。
A群溶血性レンサ球菌咽頭炎:A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は、実は2020年の2~3月にかけてかなり大きな流行の波が来ていたのですが、休所・休校措置が始まって急速に収束し、そのまま現在に至っています。ただし、このときの減少が本当に感染数の減少によるものなのか、COVID19を恐れた受診控えの影響を受けたものなのかは分かりません。ただし、2023年は第19週から増加が認められており、注意が必要です。
次に、これらの夏風邪はどんな特徴があるのか説明していきます。
夏風邪はウイルスが原因のことが多く、「エンテロウイルス属のエコーウイルス」「コクサッキーウイルス」「アデノウイルス」などがその代表となります。
これらのウイルスが、手足口病(てあしくちびょう)やヘルパンギーナ、咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ※通称「プール熱」)などの、「夏風邪」を引き起こします。
これらのウイルスの多くは、お腹の中で増殖します。
そのため体外への排出までに時間がかかって、風邪が長引く傾向にあります。したがって、一般的に普通の風邪は3日程度で熱が下がるのに対し、夏風邪は5日前後と、高熱が長く続いてしまいがちなのです。夏風邪は主に子どもが発症することが多いと言われていますが、大人でも発症することはあり、しかも重症になりやすい傾向にあります。お子様の看病をするときなどは注意して下さい。また、ワンシーズンに何度も夏風邪にかかることもあるため、油断できません。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナってどんな病気?
コクサッキーウイルスなどにより、38~40度の発熱で発症し、同時にのどが痛む病気で、発熱が1~3日続き、食欲不振、全身のだるさ、頭痛などを起こします。
一般的に経過は良好で、後遺症は残らず、2~3日以内に回復します。
1~4歳くらいまでの乳幼児がかかりやすい、夏かぜの代表的な病気の一つです。
ヘルパンギーナは、急性期には、のどからウイルスが排泄されるため、咳をしたときのしぶきにより感染します。
急性期~回復期(発症後4週間後ごろまで)には、便からウイルスが排泄されます。
ヘルパンギーナを予防するにはどうしたらいいの?
特別な予防法はなく、おむつの交換など便を扱ったあとは手洗いをきちんとすることと、洗濯物を日光で乾かすことなどです。
ヘルパンギーナにかかったらどうすればいいの?
症状が重い場合は小児科を受診しましょう。
食欲低下時には、脱水にならないように水分補給に注意しましょう。感染予防として、感染者との接触に注意したり、流行時には手洗い・うがいを徹底しましょう。
<ヘルパンギーナにおける水疱>
手足口病
手足口病ってどんな病気?
エンテロウイルスの感染により、口の粘膜および手足にみずぼうそうのような発しんが現れる乳幼児の病気です。
発症者の約3分の1に軽度の発熱がみられますが、高熱が続くことはありません。
せきをしたときのしぶきや、便などから感染します。感染してから病気の症状が出るまでの期間は3~5日です。
手足口病を予防するにはどうしたらいいの?
手洗いをしましょう。
回復後2~4週間は、便からウイルスの排泄があり、人に感染させる恐れがあるため、便や尿の処理には特に注意が必要です。
手足口病にかかったらどうすればいいの?
たいていは、数日間のうちに自然に治ります。
高熱、吐き気、頭痛の強いとき、不機嫌なときなどは早めに医療機関に相談してください。
口の中の痛みで食欲がなくなるので、薄味や刺激の少ない食事をとりましょう。特に、脱水にならないよう、水分補給を心がけましょう。
<手足口病における水疱性発疹>
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱(プール熱)ってどんな病気?
アデノウイルスの感染により、発熱(38~39度)、のどの痛み、結膜炎といった症状を来す、小児に多い病気です。
プールを介して流行することもあるので、プール熱と呼ばれることもあります。
通常、6月ごろから徐々に流行しはじめ、7~8月にピークとなります。
咽頭結膜熱(プール熱)を予防するにはどうすればいいの?
流行時には、流水とせっけんによる手洗い、うがいをしましょう。
感染者との密接な接触は避けましょう(タオルなどは別に使いましょう)。
プールからあがったときは、シャワーを浴び、目をしっかり洗い、うがいをしましょう。
咽頭結膜熱(プール熱)にかかったらどうすればいいの?
高熱の場合は小児科、結膜炎の症状が強いときは眼科を受診しましょう。
感染力の強いウイルスなので、手洗い・うがい、タオルや洗濯物は別で洗濯する、プールに入る前後はシャワーで体や目をよく洗いましょう。
吐き気、頭痛の強いとき、せきが激しいときは早めに医療機関に相談してください。
<プール熱による結膜炎>
どの病気にも言えることですが、体力をつけることや、免疫力を高めることはとても大切です。特に暑い季節は夏バテなどで食欲が落ちて、偏食気味になってしまうことが多いため、しっかりと栄養を摂ることを心がけたいですね。また、「暑さ」がストレスになると免疫力低下の原因になるため、我慢しすぎずにエアコンも活用していきたいところです。
夏風邪を予防するためには、日々の生活習慣の見直しが必要です。
外から帰ったらすぐにうがい、手洗い、目薬をする
喉や手、目に付いたウイルスをしっかり洗い流しましょう。
不調を感じたら、無理せず早く寝る
睡眠や休息は、免疫力を保つために重要です。
エアコンは温度を低くしすぎない
エアコンは26~28度くらいに設定しましょう。
オフィスが寒い場合は、上着を羽織るなどして体を冷やしすぎないようにして下さい。
布団の湿度を下げる
布団の湿度が多いと、ダニが繁殖しやすくなります。ダニはアレルギー性疾患や、場合によっては風邪症状を長引かせる原因になるので、防ダニ対策が大切。特に布団の下には、除湿シートなどを敷くと良いでしょう。
なるべく人混みを避ける
ご存知のように、人が多いと、それだけウイルスに感染する確率も高くなります。
なるべく人混みは避けましょう。
夏風邪にかかりにくくするための食事の取り方について少し具体的にお伝えします。
高タンパク・低脂肪を心がけた食事でバランス良く栄養を摂って、抵抗力を高めましょう。
バランスの良い食事とは以下の食品を摂ることです。
- エネルギーとなる糖質を多く含む主食(米・パン・さつまいもなど)
- 丈夫な体をつくるタンパク質を多く含む主菜(魚・肉・大豆など)
- ビタミン・ミネラルを多く含む副菜(野菜類など)
さらに抵抗力を高めるためには、以下の栄養素などを摂ると良いでしょう。
ビタミンA
ビタミンAは、ウイルスの侵入元である鼻や目の粘膜を強化します。
(レバー・うなぎ・小松菜・かぼちゃ・ほうれん草など)
ビタミンC
ビタミンCでコラーゲンの生成を助けたり強度を上げたりして、皮膚や粘膜を強化しましょう。(ミカン・キウイ・ピーマン・ジャガイモなど)
発酵食品
腸内細菌のバランスを良い状態に保ち、腸内環境を整えることで、風邪予防に貢献できます。
(キムチ・ヨーグルト・納豆・チーズなどの発酵食品)
発酵食品は1日2回以上、朝と夜など間を空けて摂ると良いでしょう。
腸内環境を整えることが風邪予防になるというのは、少し意外だったのではないでしょうか?腸管は、体外とつながっている唯一の内臓。
24時間365日休まずに、食物や空気中から体内に侵入してきた病原体を感知し、排除しています。そんな免疫システムが発達している腸を整えることで、より風邪をひきにくくできるのです。
夏風邪を早く治す方法
しっかり体調管理や予防を行なっていても、夏風邪にかかってしまうことはありますよね。でも、ウイルスをやっつける特効薬というのは存在しないため、夏風邪にも即効性のある治療法はないのが現状です。しかし、ウイルスによる夏風邪を長引かせない対策はできます。
夏風邪をひいてしまったら、ひどくなる前にしっかりと食事を摂って栄養補給をし、体力と免疫力を高めることが大切です。脂肪や食物繊維が多い食べ物などは、消化に悪いので避けましょう。消化の良いお粥やうどんに、卵や白身魚、鶏ささみといった低脂肪高タンパクな食材を組み合わせたあっさりメニューがおすすめです。
ホットミルク、ココア、コーンスープなどを飲むのも良いでしょう。
繰り返しになりますが、食事だけでなく、じゅうぶんな睡眠や休養も本当に大切です。
無理に会社や学校へ行ってしまうと、夏風邪が悪化して長引いてしまいます。
夏風邪は、高熱が長引いて苦しい思いをすることもあります。
喉がイガイガする、痛い、咳が出るといったときは、夏風邪を疑って、くれぐれも早めに対策するようにしましょう!