従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
12月度の衛生委員会の資料になります。
12月度のテーマは「年末について」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2022年12月度
衛生委員会資料
産業医 北村 香奈
年末が近づいてきましたね。コロナ禍において、ずーっと忘年会や新年会は制限されてきた中、今年は飲食店において、忘年会予約が通常時の7割近くまで戻ってきている、という情報もあり、大人数は避けるにしても、5、6人で忘年会しようと思っている方は多いのではないでしょうか。そこで気をつけないといけなのが…コロナ対策はもちろんとして、その他に以下の3点ほどが挙げられます。
1.飲酒
2.食事量
仲間と楽しい時間を過ごしていると、ついつい食べ過ぎてしまうものです。
食べ過ぎは、腹痛や嘔吐、後々のメタボへつながっていきますので、注意したいものです。
いつもと同じくらいの食事量をこころがけてほしいです。
3.睡眠
忘年会は夜遅くまですることがありますし、楽しくて気分が高揚して寝つきにくいということもあります。
睡眠リズムが崩れないためにも、無理なスケジュールを組むことは控え、楽しくお早めに帰宅してくださいね。
その中でもやはり心配なのが飲酒!ついつい飲み過ぎてしまう、酔っ払って失敗してしまう、翌日の仕事に影響する、など心配事がつきません。そこで、飲酒について少し詳しく注意点を説明していきたいと思います。
お酒は適量が大切 飲み過ぎは肥満の原因に
「酒は百薬の長」と言われ、飲酒は日常生活でさまざまな行事と深い関わりをもっています。飲酒は疲労の回復やストレスの解消あるいは人間関係を円滑にするなど、望ましい影響を与えてくれますが、その効果は適度な飲酒を守ることではじめて得られるものです。
アルコールに含まれるカロリーは1gあたり7kcalで、脂肪の9kcalに次ぐ高カロリー食品なのです!カロリーの他の栄養成分はほとんど含まれません。(非蒸留酒には糖質が含まれます)。
はじめは「少し」と思っていても、つい飲み過ぎてしまうのがお酒。さらに、アルコールには食欲を高める作用もあり、食べ過ぎて肥満の原因にもなります。
アルコールを飲み過ぎないための対処法
アルコールに強い体質かどうかは遺伝によって決まっており、日本人は4~5割程度がお酒に弱い遺伝子をもっているとされます。下戸にとっては宴席で何を飲むかというのは、切実な問題です。
体質の違いを決めるのは、「ALDH2」という酵素の働き方。
酒類に含まれるエチルアルコールは、肝臓で分解されると毒性の強い「アセトアルデヒド」になります。この物質は頭痛や吐き気、動悸などを引き起こします。このアセトアルデヒドを分解して酢酸に変える酵素のうち、いちばんの働き者がALDH2なのです。ALDH2がうまく働かないと、アセトアルデヒドが体内にたまって苦しい思いをします。
- 飲むとすぐ顔が赤くなる。頭痛や吐き気がしてくる。ウィスキーボンボンで酔っ払う
- 「美味しいご飯が食べたいなぁ」が口癖
- 会費のためにめちゃくちゃ食べる
- 酔い潰れた人の介抱役になりがち
- 飲み会の時の割り勘が損に感じてしまう。お酒への憧れがある。
- 小さな体で華奢
これが「飲めない族」。一方、残りの6割の「危ない族」、つまり飲んでも悪酔しない人は、ALDH2の働きでアセトアルデヒドがどんどん分解され、頭痛や吐き気などをあまり経験しません。 そのかわり、アルコール依存症や内臓疾患にかかる可能性が高いから健康面が、「危ない族」なのです。
そこで、飲めない人も飲める人も飲酒で体にどんな影響があるかよく知っておき、自分にとって適度な飲酒習慣を身につけていただきたいです。
お酒を飲むときの注意点
- 自分の適量を知るとともに、その日の体調にも注意する。
- お酒を控えていたり、飲めない体質の人は、周囲の人に「自分はお酒を飲めない」ことを事前に伝えておきましょう。
- 会席やパーティーでは、ビールやウイスキーの水割りの代わりに、色が似ているウーロン茶やノンアルコール飲料を上手に利用しましょう。
- お酒を飲むときは水も飲みましょう。アルコールには利尿作用がありトイレが近くなります。排出された水分を補わないと脱水状態になりやすいのです。
- 短時間の多量な飲酒(一気飲み)を避ける。たとえ飲む回数が少なくとも、一時に大量に飲むと健康障害が起こりやすくなります。アルコール濃度の高い血液が脳に流れ大脳全体が麻痺し、呼吸中枢が麻痺し死に至る危険もあります(急性アルコール中毒)
純アルコール量で約20gが限度
厚生労働省の指針では、1日のアルコール摂取量の目安を、純アルコール量で約20g程度だとしています(女性は男性の2分の1から3分の2程度)。
これをアルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500mL)、日本酒は1合(180mL)、焼酎0.6合(約110mL)、ウイスキーはダブル1杯(60mL)、ワイン1/4本(約180mL)、缶チューハイ1.5缶(約520mL)となります。宴会でこの量は少ない…ですよね汗
アルコール健康医学協会によると、血液中のアルコール濃度0.02~0.04%なら「爽快期」で、さわやかな気分になれます。このときはまだ、皮膚が赤くなったり、陽気になったりする程度です。(1単位(ビール中びん1本、日本酒1合、焼酎0.6合)のアルコールを飲んだときの血中アルコール濃度が0.02~0.04%)です。0.05~0.10%は「ほろ酔い期」。体温が上がり、脈が速くなったりしてきます。
酔いが進むと次第に、理性をつかさどる大脳皮質の活動は低下し、0.11~0.15%の「酩酊初期」では、気が大きくなって大声を出し、怒りっぽくなります。さらに、0.16~0.30%の「酩酊期」になると、鎮静効果が強くなり麻痺が小脳まで広がり、運動失調の状態になります。呼吸が速くなり、千鳥足になったり、何度も同じことをしゃべったりするようになります。あ〜よく見かける状況…
一般的に、純アルコール量で約20gを限度とするのが上手なお酒の飲み方といえる。これは、「爽快期」を維持して酒を楽しみ、酒量が増えたとしても「ほろ酔い期」でとどめておける量なのです。
体重約60kgの人が日本酒にして2合のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは約3~4時間体内にとどまる。それより多い量のお酒を飲むと、アルコールが体内から消失するまで約6~7時間かかる。
これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性はもっと長い時間がかかります。深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いになってしまうんです。
参考に、道路交通法において、酒気帯び運転の基準値となる呼気中アルコール濃度は0.15mg/L。 血中アルコール濃度に換算すると、0.3mg/mL(0.03%)に当たります。
「糖質ゼロ」でもカロリーは「ゼロ」ではない
「糖質ゼロ」「カロリーオフ」といった表示をしたビールや発泡酒などの酒類が店頭に並んでいます。しかし、「糖質ゼロ」と表示してあっても、カロリーは「ゼロ」ではないので注意が必要です。健康増進法に基づく栄養表示基準では、飲料では100mL当りで糖質0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示でき、熱量(カロリー)が20kcal以下であれば「カロリーオフ」と表示できるんです。
実際には、量を少なくしていても糖質が含まれていたり、カロリーがある場合もあるということ。糖質0と謳っていても、アルコール分5%であれば100mL当たり35kcal、350mL(レギュラーサイズ)では123kcalが目安になります。
寝る前の飲酒は睡眠の質を下げる
アルコールは寝つくまでの時間を短縮させるので、寝酒に使っている人は少なくないと思います。しかし就床前に飲んだアルコールは、少量でも睡眠の後半部分を障害することが知られています。つまり、寝つきは良いが夜中に目覚めてその後なかなか眠れない「中途覚醒」が起こりやすくなるんです。
アルコールは血圧を上昇させる
適量のお酒を飲むと、一般的に血圧が低下し、善玉コレステロールのHDLコレステロールが上昇する。適量に抑えていれば、血小板の凝集が抑制され、心臓疾患を抑えられることが知られています。
しかし、大量に飲み続けると、血管の収縮反応が高まり、心臓の拍動が速まり、逆に血圧は上昇します。毎日の飲酒量が多い人ほど血圧の平均値が高く、高血圧のリスクが上昇することが多くの研究で確かめられています。
やはり、適量にとどめることが大事ですね!
アルコールは中性脂肪値も上昇させる
血中の脂質が増え過ぎる脂質異常症は、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患や脳卒中などのリスクを上昇させます。異常高値になると体に異常をもたらすのがLDLコレステロールと中性脂肪です。
そのうち中性脂肪が増え過ぎる原因のひとつは、肝臓で中性脂肪の合成が増えること。そして、アルコールを飲み過ぎると、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が促され、それとともに肝臓でのアルコール代謝が亢進し、結果として脂肪酸からの中性脂肪の合成が増え過ぎるのです。
過度のアルコール摂取は脂肪肝の原因にもなります。なお、おつまみとして糖質や脂肪の多い高カロリーの食品を食べると、さらに脂肪肝になりやすくなるので注意が必要です。おつまみは野菜や大豆食品など、食物繊維が豊富で低カロリーのものが望ましいですね。
アルコールには、食欲を亢進する作用もあるということを覚えておいてください。アルコールを多量摂取すると、脂肪細胞から分泌され食欲を抑制する作用のあるホルモン「レプチン」が減少するからです。
お酒が進み、食欲も増進し、中性脂肪アップ、という悪循環に陥らないよう、ご注意を!
アルコールの血糖への影響
アルコールはアルコールそのもの作用やアルコールの代謝に伴って血糖値に大きな影響を与えます。多量の飲酒は糖尿病の危険性を高め、特に肝障害や膵障害(糖代謝は膵臓からのインスリンが関与してます)が加わるとコントロールが難しい糖尿病になるため、糖尿病患者は多量飲酒は絶対避けるべきです。アルコールの飲み過ぎは、インスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」に直接に影響し、2型糖尿病のリスクを上昇させることも分かっています。
また、アルコールは低血糖を引き起こすこともあります。特に食事を十分にとらずに飲酒すると低血糖になりやすいのです。それは食事量低下のため肝臓のグリコーゲンが減少しており、さらにアルコールの代謝に伴い糖新生(糖質以外の物質からグルコースを産生する作用)が抑制されるためです。
あらかじめ食事をとるのであれば、低脂肪で高タンパク質の食品(豆腐・枝豆・イワシなど)を食べると良いですよ。
せっかくの楽しい忘年会に水を差すようなテーマにはなってしまいましたが、お酒との良いお付き合いを目指していただきたく、お伝えしました。皆様良い年末をお過ごしくださいませ。