2022年10月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

10月度の衛生委員会の資料になります。

10月度のテーマは「職場環境について」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2022年10月度

衛生委員会資料

産業医 北村 香奈

 

今回は、産業保健にとって重要な課題である、職場環境について、お話ししていきたいと思います。

職場環境を整えることの重要性から、産業医は職場巡視を行なっていますので、その職場巡視のポイントについてもお伝えしたいと思います。

 

職場環境とは、空調や照明などの室内環境や、上司・同僚との人間関係、仕事の進め方、労働時間など、従業員を取り巻く環境のこと全て!を指して言います。

もし、1日の1/3を過ごす職場環境が劣悪の場合、従業員の作業効率が低下することによって、業績の停滞や悪化を招いてしまうことにもなりかねません。

厚生労働省でも、「職場環境を改善することによって、従業員の心理的ストレスを軽減し、生産性を向上させる効果がある」という見解を示しており、職場環境の改善は、従業員の定着を図り、企業の成長を目指す上で切っても切り離せない要素になります。

職場環境を改善する方法にはどんなものがあるのでしょうか。厚生労働省では「快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」として下記の4項目を制定しています。

 

  1. 作業環境の管理
  2. 作業方法の改善
  3. 心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備
  4. その他の施設・設備の維持管理

そこでこれらを改善していくためのアイデアをお伝えしていきたいと思います。

 ①『作業環境の管理』に対するアイデア

作業環境の管理とは、温度・照度などの作業環境を従業員に適した状態で、維持することを指しています。たとえば、暑すぎる、照明が暗いといったように不適切な作業環境であれば、従業員の疲労やストレスを高めてしまう原因になりかねません。具体的な3つのアイデアをお示しします。

 

1.空調設備を整える

職場で、暑さ・寒さによって不快に感じている人はいないでしょうか。ただし体感温度は人それぞれなので調整するのも難しい面もあります。一応職場環境として、温度17℃以上28℃以下、湿度40%以上70%以下となるよう努めよ、という規定はあるのですが・・・。

空調設備を整えるなら、ハイブリッドファンで空気を動かす工夫をした方が良いです。ハイブリッドファンは、エアコンの風を利用して、羽を回転させ、風を部屋中に拡散します。少ない風でも、部屋全体に循環させるため、電気代が節約できるというメリットも生まれます。現在のコロナ感染対策にもいいですね。

 

2.音楽を流す(バックミュージック)

社内が無音だと、殺伐として空気が重く感じられてしまう場合があります。そこで音楽を流すと、社内の雰囲気を和らげたり、集中力を高めたりすることもできるでしょう。

選曲では、クラシックやジャズなど、ボーカルが入っていない曲だと聞き流しができます。また昼休みや就業時間などにテンポのよい曲で始めるのも、メリハリがついてよいかもしれません。

このアイデアは、音楽を心地よいと感じる人とそうでない人によって影響に差が出るので、社内でよく話し合って取り入れた方が良いですね。

 

3.ニオイ対策をする

職場では多くの人が集うため、さまざまなニオイが入り混じります。スメルハラスメントと言う言葉が生まれるほど、自分では気にならなくても人によっては不快に感じてしまうこともあるため、気持ちのよい職場作りにおいてはニオイ問題をクリアにしておく必要があります。

嫌なニオイの原因を取り除く空気清浄機などの設置や、香りで気分をリフレッシュすることも検討しましょう。天然アロマなどよい香りがするものをおくのも効果的です。これも好みがありますが。。。

 

② 『作業方法の改善』に対するアイデア

作業方法の改善とは、従業員の心身の負担が軽減できるような取り組みになりますが、ソフト面・ハード面でできることを考えていきます。

 

オフィス家具について

作業のしやすい環境づくりとして、スタンディングで作業できる机や、体への負担になりにくいオフィス家具を新調してみるのも一つ。機能性が高く、見た目にもすっきりしたオフィス家具だと、気持ちよく仕事ができるでしょう。外出が多い方でもオフィスに帰った時に見た目がすっきりしていると落ち着くはずです。

 

個々のライフスタイルに合った働き方

社会情勢の変化や、働き方改革によって、テレワークの導入を検討する企業が増えました。テレワークを導入することで、遠隔地にいる人とビジネスできたり、家庭の事情による離職を防いだりすることも可能になります。ただテレワークを成功させるためには、設備の整備だけでなく、それに伴う制度やルール作り、そして社内の意識統一などが必要になることをお忘れなく。

 

③『労働者の心身の疲労の回復を図るための施設・設備の設置・整備』に対するアイデア

 

従業員一人ひとりが心身の疲労をためることなく仕事に取り組めるよう、休息できる場所・設備を整えたり、業務の進め方を検討したりする必要があります。

リラックスできるスペースを何らかの形で作っていただきたいです。社内にホッと一息つけるような休憩場所をつくる。外へ出ることが多い方はご自身でホッとできる場を見つけておくことも大事です。

 

④『その他の施設・設備の維持管理』 に対するアイデア

 

8s活動と職場環境改善ミーティング実施

整理・整頓・清掃・清潔・しつけ・シェア・節約・スマイル8つのSからなる「8S運動」に取り組んでいる企業もあるようです。たとえば机の中に眠った文具をスッキリ整理させることで、何がどこにあるのか一目瞭然で分かり、無駄に文具を揃えず、経費の削減もできるでしょう。

そしてそれらを推進するのに定期的にミーティングを持つことも大事です。

 

そこで次に、職場環境を改善していくためにどう進めていくのか、その手順についてお伝えしていきます。

職場環境改善のための取り組み手順

1.一人ひとりが意見を出す

一人ひとりが、どうすれば働きやすい職場になるのか、改善案を出します。人任せにするのではなく、自分の意見を出すことで当事者意識が生まれやすくなる狙いもあります。

さらに自社のビジョンを全員で共有した上で、改善案を出してもらうとより有用性のあるアイデアが生まれやすくなるでしょう。

2.職場改善ミーティングの実施

月に1回など、定期的にミーティングの場を設け、職場環境の改善について議論します。意見を出す場、意見に答える場、出した意見を評価する仕組みをつくることが大切で、出た意見について批判をすることは避けましょう。

このミーティングで、個人が出した職場環境の改善案を実行するのかどうするのか判断します。

3.PDCAをまわす

ただ職場環境の改善について考えたり、実施したりするだけではなく、Plan(計画)Do(実施)Check(検証)Action(改善)を行うことが大切です。やりっぱなしにせず検証しつつ、職場環境を改善していきましょう。

 

このような職場環境改善を推進するために、産業医は最低2ヶ月に一度、職場巡視を行っています。

 

労働者50名以上の事業所では、週1回の衛生管理者による職場巡視、2カ月に1回以上の産業医による職場巡視が義務となります。職場巡視を行う際には、チェックリストを用いることで確認するポイントを明確化し、改善の過程を振り返るようにしています。基本的なポイントは安全衛星の5Sになります。

例として、事務所でのチェック基準を紹介します。

事務所則に定められている主な巡視の着眼点

空気環境

 1)気積(人の密集度):10㎥/人以上         

 2)換気:一酸化炭素:50ppm以下、二酸化炭素:5000ppm以下

 3)温度・湿度:室温17℃以上28℃以下、相対湿度40%以上70%以下

 4)照度:精密な作業:300ルクス以上、普通の作業:150ルクス以上、粗な作業:70ルクス以上       

 5)騒音・粉塵 等
2.清潔 1)給水、排水 2)ねずみ、昆虫等の防除 3)廃棄物 4)便所・洗面 等
3.休養
 1)休憩:50人以上又は女性30人以上では男女用を区別する事 2)睡眠・仮眠施設 3)椅子の設置等
4.救急
 1)救急用具の備え付け、消火器、避難通路等

【安全衛生における5Sとは?】
1. 整理:会社にとって必要なものと不要なものをきっちり区別し、必要なものだけを残しているか。
2. 整頓:必要なものが、必要なときにすぐに取り出せるような置き場所、置き方が決められているか。
3. 清掃:ゴミや汚れのない綺麗な状態を保ち、掃除のルールを作る。
4. 清潔:整理・整頓・清掃を徹底して実行し、定めた状態を維持して定期的にチェックできているか。
5. しつけ:従業員が決められたことが守れるよう習慣化し、それを確認できる仕組みが作られているか。

 

ポイントを羅列されてもわかりにくいかと思いますので、私が巡視の時に利用しているチェックリストをお示しします。

 

チェック項目

1.蛍光灯・室内照明の取り付けは適切か。(外れ・壊れ・汚れ等)

2.作業台の照度は適切か。(300ルクス以上・ちらつき・まぶしさ等)

3.室内表示物・看板の取り付けは適切か。(はがれ・汚れ・内容・掲示期間等)

4.職場は適切か。5Sが徹底できているか。

 (一人10㎥以上の作業空間)(机の上の整理/机の下の書類・ダンボール等)(休憩室、トイレも確認)

(机の上の整理)

5.通路は適切か。

 (オフィスゾーンは原則80cm以上)(共用通路部分は120cm以上)(つまずき・すべり等の危険はないか)

6.避難誘導灯は適切か。(非難口誘導灯・通路誘導灯)

7.非常口のドアは正常か。(外開き・解錠等)

8.消火器は所定の場所に置いてあるか。(設置場所・見やすい標識・転倒防止)

9.消火器・消火栓の前面に物品を置いていないか。

10.救急用具は設置されているか。(内容物・清潔保持等)

11.配線、コンセントなど電気用具は安全に管理されているか。 (たこ足・垂れ下がり・アース端子等)

12.温度・湿度管理は適切か。(気温17℃以上28℃以下・相対湿度40%以上70%以下)

13.異臭の発生・煙や埃の充満はないか。(たばこ副流煙等)

14.廃棄物(ゴミ)の処理は適切か。

  (清潔の保持等)

15.特定業務従事者への健康診断を、6か月以内毎に1度健康診断を受診させているか。

  (週1回以上又は月4回以上の深夜業(22時~5時))

16.特記事項

 

実は、このチェックポイントだけでなく、職場環境の重要ポイント、“職場の雰囲気“も見ています。

職場の雰囲気はなんとなく伝わってくるものです。

 

今回は職場環境について取り組み方、産業医が行っている職場巡視についてお伝えしました。

働く環境の大事さは皆さん感じてはおられると思いますが、具体的にどう改善していけばいいか、ということへのヒントにしていただければと思います。