2022年8月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

8月度の衛生委員会の資料になります。

8月度のテーマは「お腹の調子について」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2022年8月度

衛生委員会資料

産業医 北村 香奈

 

年々暑さが厳しくなってきていて恐ろしいですね。

そんな中、夏になるとお腹の調子が悪くなる、という人が増えています。急激な暑さで自律神経のコントロールが悪くなってきているようです。

そこで今回は暑気あたり、特にお腹の調子が悪くなる事について、対策も含めお伝えしたいと思います。

 

高温多湿になる夏の時期は、食中毒や、アルコールや水分のとりすぎなどで、腹痛を伴う下痢を起こす人が増えてきます。

大腸には主に、腸の内容物を肛門に向けて移動させる「蠕動(ぜんどう)運動」と、腸の内容物と消化液を混ぜ合わせるために筋が収縮と弛緩を繰り返す「分節運動」の2種類の運動があります。これらの動きに何らかの異常が起こると、便秘や下痢になりやすくなります。

 

そもそも下痢とは?

便に含まれる水分量が多すぎたり、軟便が1日に何度も排出されたりする状態を下痢と呼びます。下痢は大別すると、1週間程度で症状が落ち着く「急性下痢」と、症状が1カ月以上続く「慢性下痢」とに分けられます。

 

急性下痢の多くは、食べすぎによる消化不良や、アルコールによる刺激などが原因となります。腸管内にアルコールが入ると、腸管での水分の吸収が悪くなり、便の水分が増えてしまうことから、下痢を起こしやすくなります。

 また、今の時期は冷たいものの飲みすぎや、冷房の効きすぎなどから、腸が冷えて下痢を起こすこともあります。夏場は特に、ビールの飲みすぎに注意が必要です。アルコール&冷たいもの、で、お腹にとっては負担大ですよね。冷えは下痢だけでなくさまざまな腸の不調の原因にもなりますので、夏であっても腸は冷やさないように注意してください。暑い屋外と冷房がきいた室内を頻繁に行き来することによる急激な気温差も腸に大きな負担をかけます。どっちに合わせたらいいんだ、と混乱するんですね。

 

急性下痢で気をつけたいのは、細菌やウイルスなどによる感染症です。夏場は主に加熱不十分の鶏肉に多く見られるカンピロバクターや、牛や豚の腸に生息する病原性大腸菌O157などによる細菌性食中毒が発生しやすくなります。これらの食中毒では、下痢のほか、腹痛、吐き気や嘔吐、発熱、脱水などの症状が表れることがあります。肉類は十分に加熱し、生野菜はしっかり洗うなど、この時期は特に衛生管理に注意してください。卵もサルモネラ菌が心配な食品です。卵を触ったら手を洗ってから調理する、など気をつけてください。

梅雨時から夏にかけては細菌性が大半を占め、冬になると、低温・低湿度に強いノロウイルスなどの食中毒が増えてきます

 

食べ物を食べ、それが体内で消化されることについてもう少し詳しく説明したいと思います。

 

通常食べ物が胃へ運ばれると、胃では時間をかけ食べ物と胃液を混ぜ分解し、その後小腸へと送ります。小腸ではさらに分解を繰り返し、栄養素を吸収していきます。
胃で食べ物を分解し小腸へ送り出すまで、だいたい4時間くらいの時間がかかります。
脂肪は、胃ではほとんど消化されず、十二指腸に送られます。十二指腸に送られると、胆汁や膵液という消化液によって消化されていきます。十二指腸で脂肪が消化されている間、胃は働くことができず、その間胃には食べ物がたまったままになっています。
その結果、食欲がなくなる・胃もたれを起こすといった症状が起こります。加齢とともに胃の働きが弱まってくると、さらに消化の時間がかかるようになり、胃に食べ物が留まる時間が長くなるため、より胃に不快感を感じることが多くなります。

 

もともと脂肪は消化に時間がかかる栄養素ですが、脂肪分が多いお肉は、胃腸への負担がさらに大きくなります。特に霜降り肉や、カルビなど脂肪がたっぷりの部位などをたくさん食べると、胃酸の分泌が乱れたり、分解されず腸まで運ばれることで消化不良を起こし、下痢になってしまうということも!私は今年これにやられました!焼肉屋さんへ行くと、お肉とビール!になっていませんか?
それは最高に美味しい組み合わせかも知れませんが、ただでさえ負担のかかるアルコールを飲み、冷やし、胃に負担をかけた上に消化しにくい脂肪分とは!
脂質とアルコールが合わさることによって、お腹を壊す可能性が上がることは理解できますよね?野菜や温かい汁物なども一緒に食べることを心がけてください。普段からバランスよく食べる習慣も大事です。

 

胃や腸は、自律神経によってコントロールされています。不安や心配事などのストレスなどで自律神経が乱れると、胃腸の運動が強くなり、結果下痢などを引き起こすこともあります。また睡眠不足や生活習慣の乱れなどでも起こることがあります。ということは、規則正しい生活、睡眠の確保、が下痢予防にも大事だということですね。

 

胃の負担を軽くし、胃がしっかり働いて腸にちゃんと消化されたものが運ばれるように、よく噛んで食べましょう。一口30回が目安です。30回以上噛むことで唾液がたくさん分泌され、食物の消化を助けます。
咀嚼が少ないと、胃に大きな負担がかかり、胃酸の出過ぎによる胃潰瘍など病気につながることもあります。しっかり噛んで胃やその他の消化器系を守りましょう。

まとめますと、下痢の原因は、以下のようなものになります。

  • 暴飲暴食
  • ストレス
  • 食中毒

暴飲暴食ではないけれど、夏に冷たい飲み物を飲みすぎての下痢、もよくありますね。これは、腸の粘膜の一部が刺激されて、大腸のぜん動運動が活発になりすぎてしまい、水分を吸収しきれずに下痢になるのです。冷え冷えの飲み物は控えましょう。

 

ストレスによる下痢の大半を占めるのが「過敏性腸症候群」です。
過敏性腸症候群は、検査ではまったく異常がみつからないにもかかわらず、腹痛を伴う下痢が続いたり、下痢と便秘を交互に引き起こしたりする症状のことをいいます。長く続く下痢だけど検査しても異常がない、という時は、過敏性腸症候群を疑い、消化器内科か心療内科を受診して治療を受けましょう。

 

食中毒による下痢は、腸が水分分泌をして菌やウイルスを早く体外へ出そうとしています。
これを無理に薬でとめてしまうと、毒素が体内で停滞し消化管を傷める原因になります。
下痢や嘔吐だけではなく、血便や脱水の症状がみられたら、すぐに医師の診察を受けましょう。

 

下痢をおこしても、少し安静にしていたり市販薬を飲んだりするとほとんどの場合、数日で治まることが多いですが、下痢の他にも次のような症状がみられたら、すぐに病院を受診するようにしましょう。

  • 激しい痛み、症状の悪化
  • 嘔吐や発熱
  • 便に血が混じっている
  • 排便後にも腹痛が続く
  • 脱水症状がある
  • 同じものを食べた人も同時に下痢をしている

 

下痢になった時の対処法

普段から体質的にお腹を下しやすい人は、下痢の症状がみられたら胃腸を休めるために消化の良い食べ物を食べるようにしましょう。
また、体内の水分が失われていますので、水分を補給してください。スポーツドリンクは失われた電解質を補ってくれるためおすすめです。ただ、腸の粘膜を刺激しないよう、常温のものを少しずつ摂取しましょう。下痢になると体内の水分が失われると同時に、体力を消耗しています。なので、いつまでも食べないでいることは逆によくないんですね。
症状が治まってきたら、体力の消耗を防ぎ、細胞の再生を促すために、できるだけ早く食事をすることが大切です。

 

おかゆ、よく煮込んだうどんなどのエネルギーとなる食品や、傷ついた粘膜を修復するために必要な、タンパク質が豊富な卵、豆腐、鶏のささ身などを食べましょう。
他にも、消化吸収の良いヨーグルトや、カリウムが豊富なりんごのすりおろしたもの、バナナもおすすめです。

 

反対に、下痢をしたときに控えるべき食品は、脂肪分の多い肉、うなぎ、揚げ物です。また、腸内で発酵しやすいキャベツ、さつまいも、豆類も控えましょう。消化吸収の悪いラーメンやお菓子、海藻類、玄米、腸に刺激を与えてしまうカフェイン飲料、炭酸飲料、アルコール類なども控えましょう。

 

食物繊維やゼロカロリーの食べものが下痢に良いと勘違いしている人も、少数ですがいるようです。食物繊維は大腸への負担がとても大きいので、下痢をしている時にはやめておきましょう。

 

先ほどもお伝えしましたが、大事なことなので繰り返します。

下痢になりにくい腸にするには、一般的な健康習慣ではありますが、適度に運動をしたり、充分な睡眠をとったりすることが大切です!

ふだんの食事方法も見直してみましょう。暴飲暴食をしたり、冷たい飲料やアルコール類をとりすぎたりしていないか。
これらは、腸を過度に刺激するということはご理解いただけたと思います。なるべくバランスの良い食事をゆっくり摂るようにしましょう。

 

他にも腸を整える栄養をすすんで摂ることも、下痢になりにくい腸にするために欠かせません。
人間の腸内には、細菌が1,000種類、100兆個も生息しています。腸内環境を整えるには、乳酸菌などの善玉菌を腸内で少しでも多く増やすことが大切です。また、乳酸菌などの善玉菌は腸内に住み着くことがありませんので、毎日摂取しましょう。私はちょっとこれを忘れていて失敗しました。

乳酸菌を直接摂取できるヨーグルトや乳酸菌飲料、納豆などの発酵食品を毎日食べるようにし、乳酸菌を増やす作用があるオリゴ糖や食物繊維(健康な時には積極的にとっていいです)も同時に摂るように心がけましょう。

 

最後に、頻度は少ないですが、下痢の原因として、胆嚢や膵臓の異常、潰瘍性大腸炎・クローン病があるということをお伝えしておきます。

消化のお話でお伝えしましたが、食べたものを消化するのに、十二指腸において胆汁、膵液が大きな役割を果たします。それら消化液を送り出すのが胆嚢と膵臓ですので、これらの臓器に異常が生じると、消化がうまくできず、下痢症状となって現れることがあります。

また、大腸の病気として潰瘍性大腸炎、クローン病があり、下痢に加え、血便の症状が現れます。

一般的な下痢の原因を3点挙げましたが、それに当てはまらないのに慢性的に下痢をする、などの場合は、胆嚢や膵臓の検査を、さらに血便もあるというのであれば、大腸内視鏡で大腸そのものの病気がないかを調べた方がいいでしょう。

 

 

暑い夏を健康に過ごすためにも、腸を大事にして、美味しく食べられる体づくりを意識していただければと思います。