2022年3月度 衛生委員会からのお知らせ

従業員 各位

日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。

3月度の衛生委員会の資料になります。

3月度のテーマは「国民病」です。

皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、

業務に努めていただきたいと考えております。

ご安全に!!

2022年3月度 

衛生委員会資料

産業医 北村 香奈

 

 

「国民病」ともいえる腰痛ですが、解明されていない部分もたくさんあるのが現状です。そこでまずは、腰痛の全体像を理解していただきたいと思います。

毎回コロナコロナ、と言ってしまいますが、コロナ禍で外出できず運動不足に陥り筋肉が衰えてしまい、腰痛を発症しやすい状態になっていると考えられています。

今回対処法もまとめていますので、ぜひご参考になさってください。

 

腰痛の種類

腰痛は、「ときに手術が必要で、原因を特定できる腰痛」と「手術が不要で、原因を特定しづらい腰痛」の2つに大別されます。そしてそれぞれの腰痛は、以下のように整理できます。

 

A:ときに手術が必要で、原因を特定できる腰痛   (全腰痛の15%)

腰椎圧迫骨折、脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛など

B:手術が不要で、原因を特定しづらい腰痛   (全腰痛の85%)

筋性腰痛、椎間板性腰痛、椎間関節性腰痛、仙腸関節性腰痛など

一般的に腰痛というときは、手術が不要な後者を指します。そこで4つのタイプについて説明します。

 

かがむと痛い? 反ると痛い?(痛みの判別)

4つの腰痛の特徴がありますが、いずれも共通するのは、加齢とともに腰まわりの筋肉や関節が衰え、こわばって柔軟性が失われることが原因だと考えられています。そんな脆さを抱えた状態のところへ、無理な動きが加わることで発症します。

 

筋性腰痛(10%)

筋性腰痛は、筋肉の使いすぎによって起きるいわば「筋肉痛」で、酷使した場所に炎症が起きた状態です。運送業など肉体労働が多い人、また、同じ姿勢を続けるデスクワークの人にも多く見られます。痛い場所をピンポイントで特定できるのが特徴で、そこをほぐすことで軽快します。

前屈腰痛(40%)

前屈腰痛は、背骨の椎骨と椎骨の間にある「椎間板」に問題があり、物を拾うなど前かがみになったときに、椎間板が圧迫されて痛みが出ます。背筋が弱い人に起きやすく、猫背や前かがみになりがちなデスクワークの人にも多いようです。この腰痛は揉みほぐしても良くなりません。

のけぞり腰痛(40%)

のけぞり腰痛は、電車のつり革を持つ、洗濯物を干す、赤ちゃんを抱っこするなど反り気味の姿勢を取ったときに、背骨の後ろ側にある椎間関節がぶつかることで痛みが生じます。腹筋が弱いために反り腰になっている人に起きやすく、女性に多く見られます。この腰痛も、揉みほぐしても改善しません。

お尻腰痛(10%)

お尻腰痛は、厳密に言うと腰ではなく、お尻近くにある仙骨のつけ根の歪みや炎症が原因で起こります。産後の女性に圧倒的に多い腰痛です。妊娠中に分泌されるホルモンの作用で緩んだ仙腸関節の靭帯が、出産後に正常に戻らないことで起きるケースが多いようです。

腰痛をお持ちの方は、どのタイプか判別つきましたか? 次に、特に悩む人が多い「前屈腰痛」と「のけぞり腰痛」について、おすすめの対処法をご紹介します。

正しい筋トレで対策を

まず最初に、腰痛回復の鉄則は2つあることを覚えておきましょう。その2つとは、「①筋肉をほぐして柔軟性を増すためのストレッチ」と「②筋肉を鍛えて強くするための筋トレ」です。これを両輪で行えば、慢性化した腰痛にも回復の見込みが見えてきます。どちらとも、23種類の運動を20秒ずつでいいので、「毎日」続けることが大切です。

 

太ももの前面を伸ばすストレッチ

  1. 立った状態で、かかとをお尻に近づけるようにして膝を曲げましょう。
  2. お腹に力を入れたまま、膝を後ろに引きながら足のつけ根を前に突き出しましょう。
  3. そのまま20秒間キープ。もう片方の足も同様に。

太ももの背面を伸ばすストレッチ

  1. あお向けに寝た状態で、太ももの裏を持って膝をお腹に近づけましょう。
  2. 限界まで来たら、膝をできる限りまっすぐ伸ばしましょう。
  3. そのまま20 秒間キープ。もう片方の足も同様に。

 

なぜ腰痛なのに太もものストレッチを行うのか?太ももの裏側には、ハムストリングスという筋肉があります。この筋肉が硬い人は、前に傾くとき、背骨をより曲げなければかがむことができません。このような人は背骨に大きな負担がかかりやすく、それが腰痛の原因となります。そのため、太ももの周りの筋肉を柔らかくすることは腰痛の予防にもなるのです。

次に行う筋トレは、腰痛タイプによって動きが異なります。ここでは、「前屈腰痛」と「のけぞり腰痛」におすすめの筋トレを1つずつご紹介します。

[前屈腰痛]背筋を鍛える筋トレ

  1. あお向けになって膝を曲げ、両手は体の横に伸ばします。
  2. 首から膝まで一直線になるまで、お尻を持ち上げましょう。
  3. そのまま20 秒間キープ。

 

[のけぞり腰痛]腹筋を鍛える筋トレ

  1. 膝を立てた状態で仰向けになり息をゆっくり深く吸いながら、お腹を膨らませます。
  2. お腹が膨らみ切ったら、今度は息をゆっくり吐きながら、お腹を凹ませます。
  3. これを510回繰り返します。立った状態や座った状態でも大丈夫です。

筋トレで気をつけたいのが、痛みが出ない範囲で行うこと。また患者さんを見ていると、腹筋運動のつもりが背筋を使っているなど、間違ったやり方をしている人もいます。そうすると、休めなければいけない筋肉を酷使することになり、症状が悪化しかねません。「なにかおかしいぞ」と感じたら、自己流で判断せずに専門家を訪ねることも検討してください。

腰痛対策に漢方薬を 

腰痛がひどい時は病院で痛み止めを出してもらうことも多いと思いますが、いわゆる病院で出される鎮痛薬NSAIDsは胃への負担など考えると飲み続けるのはお勧めできません。そこで、痛みに応じて漢方薬を試してみられてはいかがでしょうか。

 

1.急性期の腰痛「いわゆるぎっくり腰」

 漢方薬で第一選択と考えるのは、芍薬甘草湯です。

 また皆さんきっとよくご存知の葛根湯なども急性の腰痛には効果があります。

 


2.慢性化している腰痛

 (1)冷えが誘発する場合

1.

苓姜朮甘湯:腰から下が水に浸かっているような冷えを感じる、という腰痛に適しています。腹部も下腹部が冷たく感じることが多いと思います。

2.

八味地黄丸:高齢者の場合に、頻用されます。

3.

当帰四逆加ごしゅゆ生姜湯:元来冷え症の方で、足の先端の冷えが特徴的です。冬になると凍瘡を起こす患者で用いることが多い処方です。

 

(2)疲労が関連しておきる場合

1.

十全大補湯:疲労が慢性の腰痛と関連していることはかなり多いものです。

2.

疎経活血湯:疲労と血の流れの悪さが関与している場合に用います。

 

(3)冷えが誘発する場合
 柴胡桂枝湯 半夏厚朴湯 加味逍遙散など腰痛以外の症状から処方されることがありますが、腰痛にも有効なことがあります。

これらの漢方薬の特徴で言えるのは、体の血液や水分の巡りの悪さの改善です。ということは、薬も有効ですが、適度な運動により体内の血液循環を良くすることが大事、ということがわかります。

 

腰痛体操と同時に適度な有酸素運動を行うことで、腰痛予防、腰痛緩和の効果が現れることを期待し、日々取り組んでいただければと思います。

(もちろん急性期は安静が必要ですので、ご注意ください)

腰痛の種類まとめ