従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
12月度の衛生委員会の資料になります。
12月度のテーマは
「インフルエンザの恐ろしさとは?」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
2021年12月度
衛生委員会資料
産業医 北村 香奈
また、新たな変異株が現れ、コロナ感染の状況が心配な状態ですね。
そんな中、本来ですと寒くなってくると一番心配されていたインフルエンザについて、今年は大流行の可能性も指摘されていますので、改めて、正しい知識と予防法をご確認いただければと思い、とりあげてみました。
1.インフルエンザの恐ろしさとは?
高齢者や幼児、持病のある人などは重症化することも
インフルエンザと風邪は、のどの痛みや咳(せき)などよく似た症状がありますが、風邪とインフルエンザは、症状も流行の時期も違います。インフルエンザは、インフルエンザウイルスが体内に入り込むことによって起こります。インフルエンザのウイルスにはA型、B型、C型と呼ばれる3つの型があり、その年によって流行するウイルスが違います。これらのウイルスうち、A型とB型の感染力はとても強く、日本では毎年約1千万人、およそ10人に1人が感染しています。
インフルエンザにかかっても、軽症で回復する人もいますが、中には、肺炎や脳症などを併発して重症化してしまう人もいます。
インフルエンザ |
風邪 |
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症状 |
38度以上の発熱 |
発熱 |
全身症状(頭痛、関節痛、筋肉痛など) |
局所症状(のどの痛み、鼻水、くしゃみ、咳、など) |
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局所症状(のどの痛み、鼻水、くしゃみ、咳、など) |
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急激に発症 |
比較的ゆっくり発症 |
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流行の時期 |
12~3月(1月~2月がピーク) |
年間を通じて。特に季節の変わり目や疲れているときなど |
重症化する危険性が高い人
高齢者↓
幼児↓
妊娠中の女性↓
持病のある方↓
・喘息のある人・慢性呼吸器疾患(COPD)・慢性心疾患のある人・糖尿病など代謝性疾患のある人 など
2.どうやって感染するの?
感染経路は「飛沫感染」と「接触感染」
インフルエンザがどのようにして感染するのかを知っておきましょう。インフルエンザウイルスの感染経路は、飛沫感染(ひまつかんせん)と接触感染の2つがあります。
飛沫感染
感染者のくしゃみや咳、つばなどの飛沫と一緒にウイルスが放出
別の人がそのウイルスを口や鼻から吸い込み感染
*主な感染場所:学校や劇場、満員電車などの人が多く集まる場所
接触感染
感染者がくしゃみや咳を手で押さえる
その手で周りの物に触れて、ウイルスが付く
別の人がその物に触ってウイルスが手に付着
その手で口や鼻を触って粘膜から感染
*主な感染場所:電車やバスのつり革、ドアノブ、スイッチなど
インフルエンザを予防するためには、こうした飛沫感染、接触感染といった感染経路を絶つことが重要です。
3.インフルエンザから身を守るためには?
正しい手洗いやふだんの健康管理、予防接種で感染を防ぐ
(1)正しい手洗い
私たちは毎日、様々なものに触れていますが、それらに触れることにより、自分の手にもウイルスが付着している可能性があります。ウイルスの体内侵入を防ぐため以下のことを心がけましょう
- 外出先から帰宅時や調理の前後、食事前などこまめに手を洗う
- ウイルスは石けんに弱いため、次の正しい方法で石けんを使う
(2)ふだんの健康管理
インフルエンザは免疫力が弱っていると、感染しやすくなりますし、感染したときに症状が重くなってしまうおそれがあります。ふだんから、十分な睡眠とバランスのよい食事を心がけ、免疫力を高めておきましょう。
(3)予防接種を受ける
インフルエンザを発病した後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、重症化してしまう方もいます。インフルエンザワクチンを打つことで、発病の可能性を減らすことができ、また最も大きな効果として、重症化を予防することが期待できます(※)。なお、接種回数は、13歳以上は原則1回、13歳未満の方は2回となります。
※ワクチンを打っていてもインフルエンザにかかる場合があります。
詳しくは、厚生労働省「インフルエンザQ&A」をご覧ください。
(4)適度な湿度を保つ
空気が乾燥すると、のどの粘膜の防御機能が低下します。乾燥しやすい室内では加湿器などを使って、適切な湿度(50%~60%)を保つことも効果的です。
(5)人混みや繁華街への外出を控える
インフルエンザが流行してきたら、不要不急のときはなるべく、人混みや繁華街への外出を控えましょう。
4.「インフルエンザかな?」と思ったら
早めに医療機関で受診し、安静に
(1)早めに医療機関へ
もし、急に38度以上の発熱が出て、咳やのどの痛み、全身の倦怠感を伴うなどインフルエンザが疑われる症状が出た場合には、早めに医療機関(内科や小児科など)を受診しましょう。(※)
特に、幼児や高齢者、持病のある方、妊娠中の女性は、肺炎や脳症などの合併症が現れるなど、重症化する可能性があります。
(※)発熱12時間未満の場合、検査の結果が陽性にならないことがあります。(検査は発熱後12時間以上経過してから受けることをおすすめします)
こんな症状があったらすぐに医療機関で受診してください
・けいれんしたり呼びかけにこたえない
・呼吸が速い、または息切れがある
・呼吸困難、苦しそう
・顔色が悪い(青白)
・おう吐や下痢が続いている
・症状が長引いて悪化してきた
・胸の痛みが続いている
(2)安静にする
睡眠を十分にとるなど安静にしましょう。
(3)水分補給
高熱による発汗での脱水症状を予防するために、特に症状がある間は、こまめに水分の補給が必要です。
(4)薬は医師の指示に従って正しく服用
医師が必要と認めた場合には、抗インフルエンザウイルス薬が処方されます。抗インフルエンザウイルス薬の服用を適切な時期(発症から48時間以内)に開始すると、発熱期間は通常1~2日間短縮され、ウイルス排出量も減少します。なお症状が出てから48時間以降に服用を開始した場合、十分な効果は期待できませんが、医師の指示(用法や用量、服用する日数など)を守って服用してください。
5.ほかの人にうつさないためには?
「咳エチケット」でほかの人にうつさない
熱が下がっても、インフルエンザウイルスは体内に残っています。周囲の人への感染を防ぐため、熱が下がった後も、インフルエンザウイルスは体外へ排出されるので、数日は学校や職場などに行かないようにし、自宅療養することが望ましいでしょう。また、次のようなことにも気をつけてください。
咳エチケット
くしゃみや咳が出るときは、飛沫にウイルスを含んでいるかもしれませんので、次のような咳エチケットを心がけましょう。
マスクを着用する
くしゃみや咳が出ている間はマスクを着用し、使用後のマスクは放置せず、ごみ箱に捨てましょう。
マスクを着用していても、鼻の部分に隙間があったり、あごの部分が出たりしていると、効果がありません。鼻と口の両方を確実に覆い、正しい方法で着用しましょう。
正しいマスクの着用
口と鼻を覆う くしゃみや咳をするときは、ティッシュなどで口と鼻を覆う
すぐに捨てる 口と鼻を覆ったティッシュはすぐにゴミ箱に捨てましょう
顔をそらす くしゃみや咳の飛沫は、1~2メートル飛ぶと言われています。くしゃみや咳をするときは、他の人にかからないようにしましょう
こまめに手洗い くしゃみや咳などを押さえた手から、ドアノブなど周囲の物にウイルスを付着させたりしないために、インフルエンザに感染した人もこまめな手洗いを心がけましょう
ここからは、今年のインフルエンザのトピックスをお伝えします。
興味のある方はご参考になさってください。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックを受けて講じられた感染拡大防止措置により、米国では、2020〜2021年のインフルエンザシーズンにおけるインフルエンザ症例が、かつてないほどの低水準に落ち込んだことは周知の事実だ。そんな中、山形系統のB型インフルエンザウイルス(以下、山形系統)については絶滅した可能性も考えられるとする研究報告が発表された。メルボルン大学(オーストラリア)微生物学・免疫学分野のMarios Koutsakos氏らによるこの報告は、「Nature Reviews Microbiology」に9月28日掲載された。
インフルエンザウイルスにはA、B、C、Dの4つの型があり、このうちA型およびB型インフルエンザウイルスはヒトの間で流行する。144種類の亜型があり、ヒト以外にも鳥類やブタなどに感染するA型インフルエンザウイルスは、数年から数十年の間隔をおいて大流行する。これに対して、B型インフルエンザウイルスはヒトのみに感染し、亜型は存在せず、オーストラリアのビクトリア州で分離されたビクトリア系統と山形県で分離された山形系統の2系統に分類される。山形系統は、他の主要なインフルエンザウイルスに比べると感染性が低く、進化のスピードも遅いため、ワクチンに含まれる山形系統の株は、2015年から変更されていない。
Koutsakos氏らの調べによると、2020〜2021年のインフルエンザシーズンに、世界で山形系統の症例疑いとして公衆衛生当局に報告されたのはわずか31例で、これらの患者から実際に山形系統に属する株が分離された例や遺伝子検出法で同定された例はなかったという。
研究グループは報告書の中で、「これらの事実と、COVID-19パンデミックを受けて講じられたさまざまな感染拡大防止措置が組み合わさって、山形系統による感染が世界レベルで強力に抑制された。この系統のウイルスが絶滅した可能性もゼロではないだろう」と結論付けている。
米国の感染症専門家たちは、山形系統が本当に絶滅したのかどうかは、1インフルエンザシーズンだけでは判断できないと指摘する。専門家の一人で、米メイヨークリニックのRichard Kennedy氏は、「山形系統は、特定のシーズンに急増したかと思えば、別のシーズンには姿を消す傾向がある」と述べ、より長期的な目で観察する必要があると主張している。
一方、米国感染症財団でメディカルディレクターを務めるWilliam Schaffner氏は、「山形系統が本当に絶滅したのなら、現在、インフルエンザワクチンに含まれている山形系統の株を、より感染性が高く危険な別の株に置き換えることで、ワクチンの有効性を高められる可能性がある」と話す。
Kennedy氏もSchaffner氏の見解に賛同するとともに、ワクチンを、現状の4価ではなく3価に変更する可能性についても言及し、「3価ワクチンなら製造費も抑えられ、製造自体も簡単になるので製造量も増え、結果的にワクチンを接種できる人の数も増える」と述べる。
さらにKennedy氏とSchaffner氏は、人々が今シーズンもインフルエンザの予防接種を受け、同時にマスクの着用やソーシャルディスタンシングなどの感染防止対策を続けていれば、山形系統が本当に絶滅する可能性があることにも同意を示している。
ということで、インフルエンザのある系統はコロナ禍での感染拡大防止措置により絶滅する可能性、それによってインフルエンザワクチンの製造に変化をきたす可能性が出てきたということ!感染防止対策がどれだけ大切で影響が大きいかがわかりますね。
次に、コロナとインフルエンザ同時流行の可能性についてです。
このような状況下、果たして新型コロナとインフルエンザの同時流行はあるのだろうか。「同時流行はあり得る」と言い切るのは、感染症専門の大学教授だ。
インフルエンザ流行の可能性について、日本感染症学会は以下の2つの理由を挙げる。まず前述の通り、前のシーズンにインフルエンザがほとんど流行しなかったため、集団免疫が形成されていない可能性があること。もう1つは海外の要因だ。今夏、インドおよびバングラデシュでインフルエンザが流行しており、国境を越えた人々の移動が再開されれば、世界中にウイルスが拡散される懸念があるという。
新型コロナとインフルエンザ、各々の症状には発熱と咳という共通した症状があり、同時流行が起きた場合、にわかに区別が付きにくい。そのため、インフルエンザが流行すれば医療現場に双方の患者が混在し、混乱と逼迫を招く可能性がある。
厚労省によると、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンは原則、同時接種は不可だが、2週間空ければ他方のワクチンも接種可能となる。ただ、あまり双方にとらわれ過ぎると、子どもの場合、その他の疾患の早期発見に遅れを来す懸念もあるだろう。
新型コロナワクチン接種率のさらなる向上や、効果の高い治療薬の登場により、感染症としての位置付けが現状のままなのか、インフルエンザ並みになっていくのかが、今後の医療体制の構築に重要なポイントになるだろう。
また、これから毎年コロナとインフルエンザの両方のワクチンを撃ち続けないといけないのか、という心配がある中、コロナワクチンとインフルエンザワクチンを同時に接種することの是非についても検討されています。
米国ではワクチン接種率を高めるために同時接種も可としているが、日本では現時点で互いに片方のワクチンを受けて2週間後に接種可となっている。今回、英国のComfluCOV Trialグループによる多施設共同無作為化第IV相試験で、新型コロナウイルスへのアストラゼネカ製ワクチン(ChAdOx1)もしくはファイザー製ワクチン(BNT162b2)とインフルエンザワクチンの同時接種により安全性の懸念は引き起こされなかったことが示された。また、両ワクチンに対する抗体反応も維持されていた。英国・University Hospitals Bristol and Weston NHS Foundation TrustのRajeka Lazarus氏らが、Lancet誌オンライン版2021年11月11日号で報告した。
簡単にまとめると、
・ワクチン接種による全身反応のほとんどが軽度もしくは中等度だった。
・局所および非特定全身反応の割合は、無作為に割り付けられた2群間で同様だった。
・重篤な有害事象は重度の頭痛による入院の1件で、試験的介入に関連していると考えられた。
・免疫応答への影響はなかった。
研究者らは「来シーズンに、新型コロナワクチンとインフルエンザワクチンを一緒に接種することで、ワクチン接種のための医療現場の負担が軽減され、ワクチンが必要な人々へのタイムリーなワクチン投与とCOVID-19とインフルエンザの予防を可能になる」と考察している。
人間はずっとウィルスと戦いながら生きてきました。生き残るには、専門家の研究と、皆さんの感染防止対策の二本柱が重要です。長い期間にわたっての感染対策で疲れてきてはいらっしゃると思いますが、なんとか頑張っていただきたいと思います!