従業員 各位
日頃のご精勤に心より感謝申し上げます。
3月度の衛生委員会の資料になります。
3月度のテーマは
「花粉症について」です。
皆様に置かれましては、是非とも健康に留意いただき、
業務に努めていただきたいと考えております。
ご安全に!!
令和3年3月度
衛生委員会資料
産業医 北村 香奈
2021年春のスギ・ヒノキ花粉シーズンが始まろうと・・・、いやもう始まっています!
飛散開始が早い東京など関東や東海、九州では、2月下旬にはスギ花粉は本格的な飛散(ピーク)が始まります。黄砂やPM2.5などもあいまってほんとうにつらい時期です。また、今年はコロナの感染も心配しないといけない状況です。花粉症で鼻粘膜が弱ってしまうと、コロナにも感染しやすくなってしまいますので、より花粉症対策に気をつけていただきたいと思います。
花粉症は、主にくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻の症状と、目のかゆみ、涙、充血といった目の症状を引き起こします。またアレルギー反応を起こす花粉の種類によってはのどや皮膚のかゆみ、咳やたん、下痢や食欲の減退、微熱といった症状を引き起こすこともあります。
対策1.花粉を体内に入れない
症状を緩和させるために何よりも大切なのは、花粉を体内に入れないことです。
花粉のほとんどは鼻と口から体内に侵入してくるため、その2つの侵入経路をふさぎましょう。
花粉症用のマスクは、正しく装着することで7~8割の花粉の侵入をふせぐことができます。
しかしつけ方を間違えていたり、サイズが合っていなかったりすればその効果は半減します。
マスクの装着時は以下の点に注意しましょう。
- 顔にあったサイズのマスクをつける
- ノーズクリップの形を鼻に合わせる
- プリーツを伸ばし、鼻から顎まで隠れるようにする
- くしゃみや鼻水で内側が汚れたらすぐに交換する
また、目の粘膜に花粉が付着しないように、花粉症用のメガネをかけることも効果的です。
対策2.花粉が飛ぶ日を把握する
花粉は特定の条件の日に飛散しやすいため、その日の外出を避けるのも効果的です。
花粉が飛びやすい条件には以下のものがあります。
- 気温が高く湿度が低い日
- 風の強い日
- 前日に雨が降った日
- 晴れた日の昼過ぎ
- 晴れた日の日没ごろ
対策3.粘膜から花粉を取り除く
マスクやメガネで対策しても100%の花粉を防ぐことはできません。
ある程度は花粉が粘膜に付着してしまいますので、しっかり取り除いておきましょう。
目から花粉を取り除くためには、しっかり洗眼するのがよいでしょう。
しかし、大量の水道水は目を守る役割を持つ涙まで洗い流してしまうため、洗眼薬を使うことをおすすめします。
洗眼薬は1日当たりの使用回数が定められているものもありますので、用法を守って使用しましょう。
鼻の粘膜の洗浄には鼻うがいが効果的です。
鼻うがいは液体を鼻孔から流し込み、粘膜を洗浄する方法です。
しかし水道水などでは浸透圧が体液と大きく異なるため、鼻の奥がツーンと痛くなってしまいます。
そのため快適に鼻うがいをするための準備が必要です。
鼻うがいのために次の準備を行いましょう。
- 水道水を人肌程度まで温める
- 9%食塩水を作る(1リットルの水に対して9gの食塩を溶かす)
- 先が細くなっているボトルなどで鼻の奥に流し込む
また、鼻うがい専用の液剤も販売されていますので、準備が大変な人はそちらを利用するのもよいでしょう。
対策4.事前の対策
症状が出てから対策することの多い花粉症ですが、東洋医学では次の季節を見越した過ごし方が体調に大きく影響すると考えられています。実際に花粉症も事前の対策で症状の発現を抑えることができる、と言われています。
すでに花粉症を発症した人でも、体内に花粉がたまらないようにしておけば、春以降花粉症の症状が出ることはありません。しかしそのためには、まだ花粉が舞っていない今のうちに体に入りにくくするか、入っても体内から排出できるような体作りをしておく必要があるのです。
(1)発酵食品を積極的に摂る
花粉症予防にはヨーグルトなどの発酵食品を摂るのが有効なことは知られていますが、それにも理由があります。発酵食品は腸内環境を良好にし、排泄機能を高め、免疫力のバランスを整えてくれます。
(2)軽く汗をかく
そもそも花粉症とはアレルギー反応の一種で、体の中に過剰な熱がこもり、その熱を外に出そうとして鼻粘膜が炎症を起こしたり、目が痒くなったりすることを言います。そこで汗腺を緩め、この熱を外に放出しやすくすると、症状を抑えることができるといいます。
本来なら、自然の摂理に任せておけばいいのですが、年中エアコンを使用している現代人は汗腺の調整機能が弱っています。特に冬の間に冷たいものや甘いもの、生ものなどを摂取している人は、体が極度に冷えて、汗腺が閉ざされたままの状態が続いているので汗をかくことが大切になります。
(3)胃腸を冷やさない
胃腸が弱っていると栄養を十分に吸収・運搬できず免疫力が落ちてしまいます。そのため花粉症などのアレルギーを予防するには、まず胃腸をいたわり、免疫力を保つことが大切になります。
甘いもの、生もの、冷たいものは胃腸を冷やし、消化機能を低下させます。冬のこたつでアイスを食べたり、ビールを何本も飲んだりしていると、胃腸は冷えてしまいます。そんな時は胃の周辺を(へそまわり)を意識的に温めると良いです。
⑷バランスの良い食事
特に脂質のとりすぎは善玉菌を減らす悪玉菌を腸内に増やすことにつながるため、脂っこいものや肉類はとりすぎないように注意が必要です。また香辛料など刺激の強い食物は、鼻の粘膜を刺激するため、アレルギー反応を促進させる恐れがありますので、摂取は控えるようにするのがよいでしょう。
アルコールも花粉症のアレルギー反応を悪化させる恐れがあります。
アルコールを分解するときに発生するアセドアルデヒドは、アレルギー症状のもとになるヒスタミンの発生を促してしまいます。また、アルコールは血管を拡張させるため、鼻の粘膜の浮腫みや鼻づまりを促進させてしまうので、花粉症の季節はアルコールの摂取を抑えることが必要です。
⑸タバコを控える
タバコもアレルギー反応を悪化させる要因の一つです。
タバコの煙は鼻の粘膜を刺激するため、鼻の症状を悪化させます。
タバコの煙は喫煙する本人だけでなく、周囲への受動喫煙の影響も大きいため、普段以上に花粉症のシーズンはタバコを控える(または禁煙する)ように心がけるのがよいでしょう。
対策5.治療
花粉症の症状を抑えるためには、アレルギー性の症状に適した治療薬の摂取が有効です。
花粉症が引き起こす鼻の症状を抑えるためには、アレルギー反応による症状を引き起こす「ヒスタミン」の発生を抑える「抗ヒスタミン薬」が有効です。
鼻づまりがひどい場合には、血管を収縮させる働きを持つ薬も有効です。
目の症状がひどい場合には、飲み薬だけでなく点眼薬も併用するとよいでしょう。
残念ながら花粉症の症状を完全に抑える薬はありませんが、アレルギーの根本的な治療法に、「アレルゲン免疫療法」(減感作療法)があります。アレルゲンを含む治療薬を適切に摂取することで、アレルゲンに体を慣らし症状を緩和もしくは完治させることが期待できます。スギ花粉に対しては舌の下から薬を摂取する「舌下免疫療法」があります。スギ花粉のシーズン以外の季節も継続してスギ花粉の抗原を摂取していきます。大量の抗原を取り入れるとショック症状を引き起こす場合もあるため、3~5年にわたりゆっくりと体を慣らしていくことが必要です。
また近年では「レーザー治療」も注目されています。
アレルギー反応を起こす鼻の粘膜をレーザーで焼き、アレルギーを起こす場所を減らすことで症状を緩和させる治療法です。体質を改善するものではないため、粘膜が回復することで再び花粉症の症状が現れるようになりますが、一度の治療で2年ほど効果が持続し、再治療を受けることも可能です。
適切に軽減させるため、花粉症のそれぞれの症状に合わせた薬を選ぶようにしましょう。
日本人の25%が発症しているという花粉症はもはや国民病です。今、大丈夫な人もいつなるかわかりません。しっかり予防対策、なってしまったら症状への対策をしていきましょう。花粉症は一度発症すると治療は簡単ではなく、完全に治すことは難しいといわれています。しかしアレルギー反応がでる花粉のシーズンに適切な対応をし、免疫力を高めるよう習慣を身に着ければ、その症状を緩和させることは十分可能なのです。正しい知識を持って対応していってください。